2026年9月26日に行われた関東学生新人陸上競技選手権大会の男子5000m競歩で、法政大学1年の福岡侑弥選手が19分30秒73の自己新記録で準優勝しました。
SNE Legacy ヘッドコーチの木村は、法政大学陸上競技部の競歩コーチを務めています。今回は直接クラブとは関わりのない話ではありますが、「やるべきことを、やるべき時期に積み重ねる」という、私たちが小学生の皆さんにもお伝えしていることが、そのまま大学生の舞台で形になった出来事でしたので、ご報告させてください。
この記事を3行で
- 法政大学1年・福岡侑弥選手が、関東学生新人 5000m競歩で準優勝(19分30秒73・自己新)
- 出場者中14番目の持ちタイムから、自己ベストを1分25秒更新しての2位。優勝との差はわずか約1.2秒
- 勝因は才能ではなく「半年間、やるべきことを、やるべき時期に、冷静にやり切ったこと」
19分30秒73 が、どれくらい速いか
競歩は「両足が同時に地面から離れてはいけない」「前脚は接地から垂直になるまで膝を曲げてはいけない」という厳格なルールのもとで、歩いて速さを競う種目です。
このタイムを、皆さまに身近な大会に置き換えてみます。12月の町田こどもマラソンは、小学5年生以上の部が3kmです。
福岡選手が今回のペースのまま3kmを歩くと、11分42秒。
このタイムは、小学5年生男子の部で8番目 ── 入賞圏内です。
しかもこれは、5000mを歩き切ったペースでの計算です。3kmだけなら、もっと速く歩けます。
小学生が全力で「走った」タイムより、大学生が「歩いた」タイムのほうが速い。それが競歩という種目であり、19分30秒73という記録の水準です。
レース結果
関東学生新人陸上競技選手権大会 男子5000m競歩
- 優勝者 19分29秒58
- 2位 福岡 侑弥(法政大学1年) 19分30秒73 自己新記録
優勝者との差は、約1.2秒。
優勝した選手は、20歳以下の世界大会に日本代表として出場した経験を持つ選手です。その相手を、最後の直線まで追い詰めました。見ていて胸が熱くなる、素晴らしいレースでした。
そしてこの大会、福岡選手の持ちタイムは出場者中14番目でした。下馬評で上位にいたわけではありません。
法政大学の競歩選手として、大学カテゴリの選手権で入賞・表彰台に立つのは、今回が初めてのことです。法政大学に競歩の歴史が始まったのは、私自身が入学した2014年。歩みが始まってから12年目での、初めての表彰台になりました。
高校時代は、決して速い選手ではありませんでした
福岡選手は2026年3月に埼玉県の浦和学院高校を卒業し、法政大学に合流しました。
高校時代の自己ベストは、22分20秒51。今回の記録とは、2分50秒近い差があります。
埼玉県のチャンピオンではあったものの、インターハイには進めていません。悔しさを抱えたまま、法政の門を叩いてくれた選手です。
そしてもうひとつ。大学の体育会にはスポーツ推薦で入る選手が多いなかで、福岡選手はスポーツ推薦ではない形で入学しています。
「速かったから選ばれた」のではなく、「自分で決めて、自分で入ってきた」選手だということです。
半年間、何をしてきたか
合流の段階で、本人には方針を伝えました。「秋シーズンまでは、5000m一本で強化していく」。
これは、少し説明が要ります。
大学に上がるとシニアカテゴリになり、競歩の主戦場はトラックなら10000m、ロードならハーフマラソン(約21km)の距離に移ります。ですので大学1年生の多くは、まず「長い距離に対応すること」を優先します。
福岡選手には、逆の順番を伝えました。距離を追う前に、まず必要な水準のスピードを身につける。
そこから必要な練習を、必要な順番で積み重ねてきました。決して華やかなメニューではありません。単調で、退屈で、しかも長い期間続くトレーニングです。
それを、彼は愚直にやり切りました。
福岡選手は競歩の選手ですが、長距離ブロック ── 箱根駅伝を目指すチーム ── と生活を共にしています。
- 朝5時集合、1時間半の朝練習
- 大学の授業のあと、午後練習
- 夏は長野県で13日間の合宿。1日3回のハードトレーニング
7月の記録会で、はじめて大きく記録が動きました。20分55秒36。「これは、もしかするともしかするかもしれない」。そこから、この関東学生新人を狙いにいきました。
ただし、この20分55秒36という記録は、学生新人に出場する選手のなかでは14番目のタイムです。目標として現実的だったのは「8位入賞」でした。
当日のレース
この大会は19分前半での決着になるだろうと予想していました。ですので目標は「どんなレース展開になっても、19分台でゴールする」。
当日のコンディションは、良すぎるくらいに仕上がっていました。
これが競歩の難しいところで、動きが良すぎると、両足が同時に地面から離れる「ロスオブコンタクト」の反則に近づいてしまいます。レース前に意識を修正させる必要があったほどです。
それでも彼は、打ち合わせどおりの展開でレースを進めました。こちらが怖くなるくらい、冷静に。
持ちタイム14番目、8位入賞を目標にしていた選手が、自己ベストを1分25秒縮めて、2位でフィニッシュラインを越えました。
レースの様子(ヘッドコーチのInstagramより)
当日のレース動画を、ヘッドコーチのInstagramで公開しています。ぜひご覧ください。
勝因は「やるべきことを、やるべき時期に」
今回の結果について、私が最も大きいと考えている要因は、才能ではありません。
大学の練習に入った時点で、次のことを明確にしました。
- どの大会の、どの距離で結果を狙うのか
- そこから逆算して、どんなトレーニング計画を組むのか
- どのポイントを、いつ通過するのか
そのうえで、やるべきトレーニングを、やるべき時期に取り組んできました。
言葉にすると当たり前のことに聞こえるかもしれません。ですが、大学レベルであっても、ここが明確になっていないケースは少なくありません。そして明確になっていたとしても、焦りやコンディションの不調から、途中で計画を崩してしまうことのほうが、むしろ普通です。
福岡選手は、それを半年間、冷静にやり切りました。しかも高い水準で。これは、なかなかできることではありません。
小学生の皆さんにも、まったく同じことが言えます
ここからは、SNE Legacyに通ってくださっているお子さま、そしてこれからご検討くださる皆さまへのお話です。
私たちがクラブでお伝えしていることは、実はこれとまったく同じです。
- いつの、どの大会で結果を出したいのかを決める
- そこから逆算して、練習を組む
- やるべきことを、やるべき時期にやる
そして順番も、実は同じです。
福岡選手に「距離を追う前に、まずスピードを」と伝えたと書きました。これは、12月の町田こどもマラソンを目指すお子さまにも、そのままお伝えしていることです。
マラソン大会が近づくと、つい走る距離を増やしたくなります。けれど、長く走れるようになることと、速く走れるようになることは違います。先に必要なのは、正しいフォームと、速く動ける身体です。距離への対応は、そのあとで積み上げられます。
本番の1か月前に慌てて走り込んでも、記録は大きく変わりません。けれど、半年前から順番どおりに積み上げれば、結果は変わります。
大学生でも難しいことを、小学生に完璧に求めるつもりはありません。そこは私たちコーチの仕事です。
ただ、「今やっているこの練習が、いつの何につながっているのか」をお子さま自身が少しずつ分かるようになると、練習の意味が変わります。言われたからやる練習から、自分で選ぶ練習に変わっていきます。
大会に出ていただきたいのも、同じ理由からです。記録が残ると、次に何をすればいいかが見えるようになります。
コーチとして、今回感じたこと
最後に、正直なところを書かせてください。
今回の結果は、素直に嬉しいものでした。一方で、強く感じたこともあります。
入賞するための準備と、優勝するための準備は違う、ということです。
結果論で言えば、優勝まで1秒ちょっとでした。けれど、そこを勝ち切るための想定を、私は詰め切れていませんでした。指導者としての経験と、想定の精度が足りていないところです。
次の目標は、2月に行われる日本選手権のハーフマラソン競歩です。冬のシーズンに向けて、引き続きサポートしていきます。
法政大学の期待選手として、これからも共に歩んでいきます。
箱根駅伝予選会に向けて
私自身の出身チームでもある法政大学は、まもなく箱根駅伝の予選会を迎えます。
▶ 箱根駅伝予選会
2026年10月17日(土) 8:30 スタート
本戦への切符をつかみ、お正月に皆さまのテレビの前を駆け抜けられるよう、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。
SNE Legacy について
SNE Legacyは、東急田園都市線「南町田グランベリーパーク駅」から徒歩圏の鶴間公園で活動する、小学生向けの陸上・かけっこクラブです。
レッスンは月・水・木の夕方(16:00〜17:00/17:30〜18:30)。町田市・大和市(中央林間・つきみ野)・横浜市緑区(長津田)などから通っていただいています。
走るのが得意なお子さまも、苦手なお子さまも。今のレベルは問いません。まずは無料体験にお越しください。